2010/11/25

【NEWS】2010年、韓国で最もはやった言葉は「世界がみつめています」

Categories: , , , , , , ,

流行語の多くはネットが生んだ「宇宙語」

2010年の「ユーキャン新語・流行語大賞」の候補に、「iPad」や「~なう」などと一緒に、「K-POP」が選ばれたことが韓国で話題になっている。K-POPとはKARA、少女時代、Bigbangなど韓国のアイドルグループが歌う歌謡曲のことをいう。

1980~90年代、韓国ではJ-POPが大ヒットした。英語を混ぜた歌詞、歌手の衣装、振り付けなど、韓国の歌謡市場に大きな影響を与えた。植民地支配のわだかまりがまだ強く残っていた時代なので、「日本の歌が好き」なんて言おうものなら「親日家」とレッテルを貼られ、ものすごいバッシングを受ける時代だった。韓国では、「親日家」と呼ばれることほど恐ろしいことはなかった。

ただし、表向きには「反日」、「日本が植民地支配を心から謝罪するまで許さない」なんて雰囲気だったが、裏ではMade in Japanが最高級品とされ、日本のドラマや映画、ファッション雑誌をリアルタイムで手に入れるのがセレブの証であった。

2002年「日本大衆文化開放」によって日本の歌手の来韓公演がぞくぞく始まった。日本映画の上映も増えた。ケーブルテレビでは日本のドラマが放映され、J-POPのプロモーションビデオがよく流れた。日本のアイドルが来韓する際の空港出待ちは、日本におけるヨン様に負けないほどの数が集まる。ただし、こっそり楽しむという刺激がなくなったせいか、今はJ-POPや洋楽よりもK-POPが圧倒的に人気がある。

このため、日本の流行語大賞候補にまでなったK-POPの動向は韓国でも大きなニュースとなっている。日本のポータル検索サイトのキーワード上位に韓国のアイドルの名前がランクインした。日本の音楽アルバム販売の歴史を塗り替えた…といった具合に話題は絶えない。

G20がもたらした流行語「世界がみつめています」

それじゃ2010年韓国の流行語にはどんなものがあったのだろうか。

今年はなんといってもG20に関連する流行語が大人気を集めた。11月11~12日にソウルで開催されたG20のために韓国中が1年近く大騒ぎした。世界の首脳というお客様を迎える国として「国格」を上げなくてはならないと、「エチケットを守ろう」とか、「外国人には自分から先に声をかけ親切にしましょう」とか、テレビのキャンペーンがすごかった。

同じ時期にAPECを開催した日本の警備なんかやさしいもの。ソウル中が警察と軍人で囲まれ大変だった。そんな中、G20会場からも遠く静かな住宅街である西大門に、区役所の名前でこんなポスターが登場した。

「世界がみつめています。ソウルG20 首脳会談期間中、生ごみの排出を自制してください。11月10日~12日は、世界的国際行事G20の成功と快適な周辺環境のために、生ごみの排出を自制くださるよう協力をお願いします」

これを見た市民たちはネット上にパロディーを掲載し始めた。「世界がみつめています。お母さん夕食のおかずがチゲだけというのは自制してください」というのは、ある高校生の書き込みだ。このほか、「世界がみつめています。カップルはいちゃつくのを自制してください」、「世界がみつめています。CO2を減らすために息を自制してください」、「世界がみつめています。サービス残業は自制してください」。学園祭が行われたある大学では「世界がみつめています。先生、学園祭の期間中に課題を出すのを自制してください」などなどが広がっていった。

G20公式Twitterを名乗るなりすましTwitterも登場し、「世界がみつめています。ジャージ姿で外を歩くのは止めましょう」との書き込みがあった。これを本当だと信じてしまった人がたくさん居て騒動が起きたりもした。北京オリンピックでは、外国人を意識した政府が市民の日常生活を規制したことが話題になった。「パジャマで街を歩くな」。「道端に洗濯物を干すな」。韓国でもそれに近いほど滑稽な自主規制があったために、あんな嘘でも政府の仕業だと信じてしまったのだ。

ネットで生まれ、ネットで広がる流行語たち

これだけでなく韓国の流行語はネットの影響が日本よりも強いように感じる。ドラマのセリフやお笑い番組に登場した一言がネット上で面白おかしくパロディーにされる。その番組を見ていない人にまで広がり流行語になる。ネットの影響力は絶大で、ネットから生まれた造語が日常的に使われることは珍しくもない現象になっている。

日本の2ちゃんねるとよく比べられる掲示板サイトに「DCINSIDE」がある。ここから生まれた流行語も数知れない。元の意味とは全然違う意味で使われる言葉もかなりあった。悪質な書き込みとして禁止語フィルタリングにひっかからないように自分たちだけが使う隠語だったものが、広がったのもある。

最近ネットで頻繁にみかける「チョンダ」という単語は、本来は「漬かる」、「染みこませる」という意味。これがネットでは「返す言葉がない」、「かっこいい」という意味で使われるようになった。この意味が分からず「友達にチョンダと言われたが、これは悪口なのか?」と悩む人をけっこうみかけた。

日本でも似たような経験がある。お土産に韓国名物(と彼が勝手に思っている)とうがらしチョコをあげたら「これヤバイ!」と言われた。チョコが腐っていたのかと思ってびっくりしたものだ。「ヤバイ!」っていう言葉はおいしいとか、かわいいとか、そういう意味で使われていることを知って、またびっくりした。

今ではニュースに登場するまでに広まった言葉に「オムチンタル」、「オムチンア」がある。これは「お母さんの友達の娘」、「お母さんの友達の息子」の略字。これらもネットで生まれた。韓国のお母さんたちの決めセリフに「お母さんの友達の娘は勉強もできてかわいくて両親の言うこともよく聞くのに、うちの子はなんで~」、「お母さんの友達の息子は塾にも通わず名門大学に合格したというのに、うちの子はなんで~」がある。ここから「オムチンタル」、「オムチンア」が「頭脳明晰で仕事もできて顔までかっこいい」人を表す言葉として派生した。「オムチンタル」、「オムチンア」はその人のキャラクターを説明するときにも使われ「あの人はオムチンア」といった具合に使われている。

また以前紹介した国民的人気のオーディション番組からも流行語が生まれた。審査員たちは決めセリフとして「私の点数は~」を話し始める。この言葉は一般市民の間でも大人気となり、会社の会議でも、学校の授業でも、「私の点数は~」の一言で盛り上がる。

お笑い番組から生まれた流行語として「1等だけ記憶きたない世の中」というのがある。点数をつけて1等だけが生き残る競争社会を批判するセリフだ。就職難や物価高騰に苦しむ「88万ウォン世代」(月間所得が約9万円の20代の非正規社員)を指すもので、時代を象徴する流行語でもある。

日本語から生まれた流行語もある。韓国ではおしゃれ、ステキという意味で「ガンジ」という言葉を使う。これはネットから生まれた造語で、日本語の「感じ」から来ている。ネットで「ガンジナンダ」というのは「感じがある」という表現で、「オーラがある」、「おしゃれ」、という意味で使われている。

ネットで生まれた流行語は一時期「宇宙語」と呼ばれた。宇宙語が子供たちの言葉遣いを荒れさせていると懸念されたりもしたが、そんなことはお構いなしに、年齢・性別に関係なく広く使われている。

韓国は、メディアとして、テレビの次にネットが信用され利用されている国だ。新聞よりもネットが上位にある(韓国言論財団の調査によると、2008年韓国の新聞購読率は3割程度、最も信頼する媒体と最も利用している媒体の順位は地上波テレビ、インターネット、新聞の順だった)。2010年も2011年も、韓国の流行語の中心はネット上に登場するパロディになりそうだ。

Via 日経ビジネスオンライン

XOXO

Spread The Love, Share Our Article

Related Posts

blog comments powered by Disqus